現在、腸内環境(腸内細菌叢)の乱れは、さまざまな病気の
原因となることが知られています。そのため発酵食品や整腸剤
などが、その改善策として使用されています。
ところが、腸内環境を乱す原因については、あまり関心が
払われていないのが現状のように私は感じます。
今回は、坪井貴司『腸と脳の科学』(ブルーバックス)から
紹介します。
肉類やインスタント食品ばかりを多めに摂っていると、
便秘がちになったり、ガス(おなら)も臭くなったりして、
腸内環境の乱れを自覚することになります。
人によっては、ストレスで腸内環境が乱れる方もいること
でしょう。
これはこれで、体調のバロメーターとして、食習慣を
見直したり、ストレス対策を実施したりと、何らかの形で
行動の変化につながりますので、いいことだと思います。
でも、坪井によれば、腸内環境を一番乱しているのは
何かの病気の治療に使用する薬だといいます。食生活など
生活習慣の3倍だといいます。だから、薬は飲まないと
いうのではなく、必要最小限にするのが腸内環境の点
からも重要だと考えます。
敢えて「乱す」という表現をしていますが、腸内環境が
悪くなるばかりではないでしょう。人によっては逆に良く
なる方もいると思います。それだけ、一人一人の腸内環境は
個性的だということです。
とにかく、腸内環境を調える意味で生活習慣は大切ですが、
その3倍も強力な影響なのが治療薬なのだということです。
もし、ある治療薬を使用しだしてから腸の調子が変わった
という場合、薬を変更できるなら変更を検討し、できない
なら生活習慣の見直しをすることでしょう。
本文を書きながら浮かんできたことがあります。
抗生物質の使用回数が多いとアレルギー疾患のリスクが
高まるというものです。もちろん、必要があって抗生物質は
使用されたのでしょうが、腸内環境を変える力が強力なので
たとえ短期間であっても、別の病気のリスクになるという
現実。
薬を扱う者として、意識しておきたいことと考えます。
誤解しないでいただきたいのは、一例として抗生物質を
挙げましたが、抗生物質の発見により感染症治療は飛躍的に
進歩し、人類の寿命を延ばしてきました。耐性菌の増加と
同じようにアレルギー疾患のリスクも影の一部でしょう。
どんな薬も、光の部分と影の部分があります。適正な使用
というのが一番強調される部分ですね。
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